2013年6月5日水曜日

芸術表象論特講#3


こんにちは。日差しが強いけど、風がそこそこ心地よいです。

5月15日におこなわれました3回目のレクチャーについて、少しご報告したいと思います。

今回のゲストは、東京都現代美術館学芸員の吉崎和彦さんでした。



現在、東京都現代美術館では「フランシス・アリス展」が開催されています。
この展覧会は、吉崎さんにとって現代美術館に勤務されてから初めてする企画だそうです。

吉崎さんは、大学で美術史(もの派における菅木志雄について)を専攻していました。その後、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ校の大学院へ進学。現代美術論を専攻し、1年間勉強されたそうです。

イギリスの大学院では、社会に出ている人など年上が多く、さまざまな国から学生が集まって来ていたそうです。ディスカッションをする機会が多い中、吉崎さんはあまり話せなかったそうです。

日本に帰って来てからは、コマーシャルギャラリーで仕事をしながら、小さなギャラリーで企画展をするなどの活動をしていました。CAMPにも参加し、展覧会とトークをいかに結びつけるかということを模索されていたそうです。そして、当時南京トリエンナーレのキュレーターをしていた住友文彦氏のアシスタントをし、それから現代美術館の公募試験を受けて入ることになります。

現代美術館は、企画展の学芸員が9人おり、1つの展覧会につき2人とインターンで作業しています。

レクチャーは、フランシス・アリス展を中心にお話ししてくださいました。

フランシス・アリスは、ベルギー出身で現在はメキシコに住んでいるアーティストです。世界各国で作品を作ります。展覧会のためや依頼を受けて作品制作をするということがありますが、フランシスはしばしば自分自身で場所を選んで、さらに資金も調達します。プロジェクトを美術館など場所を限定せずにインターネット上にアップして見られるようにしています。

作品はシンプルにすることを心がけ、プロジェクトを一言、二言で表せるようにしているとのこと。その説明が伝言ゲームのように広められていくことで内容が次第に変化していく、語り手と受けて側の解釈が変わっていくことを面白がっているとのことです。

資金はどのように調達しているのか。それは、プロジェクトを進める過程で描いたペインティングを売ることで解消しているようです。
吉崎さんが、フランシス・アリスを尋ねたときの写真もいくつか見せていただきました。そのなかに、アシスタントをしている看板屋さんがいました。

フランシス・アリスがなぜメキシコにいるのか。それは、徴兵制によって軍隊に入ることを回避するためNGOに応募し、オファーがあったメキシコへ行くことになった、というのがきっかけでした。もともと建築家だったため、先住民の街を再生するプロジェクトに参加します。しかし、そこでおこなったプロジェクトをきっかけに都市計画に対して疑念を抱き、その後アーティストへと転身していきます。さらに、名前を変えてメキシコへ永住し現在にいたります。

展覧会では見ることのできない、フランシス・アリスの一面を知ることができたような気がしました。

今回の展覧会では、1つのプロジェクトに対して、ドローイング・ペインティング・彫刻など、多様なメディアを使用して多角的に見ることが出来るそうです。

長期にわたり開催されますが、1期と2期とは内容が違います。
ご覧になった方も2期目を、まだという方は是非1期目から、鑑賞に行かれてはいかがでしょうか。


フランシス・アリス展
会場:東京都現代美術館
会期:第1期 MEXICO SURVEY メキシコ編
   2013年4月6日(土)− 6月9日(日)
   第2期 GIBRALTAR FOCUS ジブラルタル海峡編
   2013年6月29日(土)− 9月8日(日)
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会期により展示内容が異なります。詳細はサイトにてご確認ください

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それでは。