2013年11月19日火曜日

芸術表象論特別講#13

こんにちは。学祭が終わり、秋が来たなぁ~と思っていたら、急に寒くなって厚手のコートを引っ張りだしてきました。
11月13日におこなわれました、「芸術表象論特講」13回目のレクチャーについて少し報告したいと思います。
今回のゲストは、日本画家の間島秀徳さんでした。



間島さんのこれまでの制作について、お話していただきました。
間島さんは、茨城県かすみがうら市に20年前からアトリエを構え、10年ほど前に住居も移したそうです。最初に見せてくださった、制作風景の映像には、豊かな自然に囲まれた場所で制作されていました。
日本画というと、畳(ではない場合もあると思いますが)の上で作品を寝かせた状態で描く、というイメージがあります。しかし、映像の中での間島さんは、屋外のコンクリートの上に少し斜めにしたりして制作していました。
技法は日本画的なのを用いているとおっしゃっていましたが、水と大理石(既成の粒子の異なるものを使用し、砂や溶岩などは採取したものを砕いて使用)と樹脂膠とまぜた顔料を使用して描いています。それも、水も顔料もお皿に乗せて・・・・というスタイルではなく、とにかく大量に使用しています。ちょっとっ本格的な家庭菜園をおこなう際に使用するような農薬散布機のようなものを使用して水を画面全体にまき、水で膜が出来るくらいびしょびしょに濡らします。ボールに大量の顔料を入れ、ドリッピングなどを用いながら描いてゆきます。水の流動性に合わせて、画面そのものを動かしながら重力を活かした技法を用いています。 
顔料はお店で売っているようなものではなく、原材料を取り寄せて作っているそうです。通常の膠ではなく、樹脂膠を使用していることについて、学生からも質問がありました。これは、顔料の白さを強調したいと思うようになってきたときに、膠の黄ばみや季節てきな変化などが気になりだし、着色がない樹脂製のものを使用するようになったと言います。試行錯誤し、画材屋さんとも相談してこの方法にたどり着いたそうです。

水の痕跡がそのまま作品になっていくような、そういうイメージがあるそうです。こうしてスライドなどの画像ではわからないのですが、実物は結構ぼこぼこした表面になっているそうです。
見せていただいた映像は、京都の清水寺での展示の様子でした。展示されたときに、たまたま知り合いのダンサーの方がいらっしゃったそうで、作品の前で即興で踊ってもらった様子も映っていました。

間島さんの作品のイメージは水です。このことについて、学生からも質問がありました。自身の中の水のイメージではなく、大学に入り日本画的な素材に関わるようになり、いろいろ模索をし試してみたところから浮かび上がってきたのが水のようなものだった、ということのようです。間島さんが学生の頃は、何でもありではないという時代で、自分が好きな表現を実現できるというよりも、いろいろなものが否定的に捉えられていた、そんな空気も持った時代でもあったそうです。そのため、描きたいものから〜何が重要なのか〜描かざるをえないものへという経緯があったそうです。

水との関わりというのは、自分の意思を直接伝える方法に限界を感じていたこともあり、水との出会いが、水と共に作る可能性にかけたいと思う様になったとのことです。水の力は、コントロールしてい描いている部分もあるが、アクシデントというか偶発的なことで自然に与えられる力の両方を利用して、制作しているそうです。

近年の作品から初期の作品、墨などの様々な技法を用いた作品をスライドで見せていただきました。

日本美術の発展に大きく貢献した岡倉天心が思索していたとされる「五浦の六角堂」。東日本大震災の際に津波により甚大な被害を受けました(現在は再建されています)。間島さんは、震災前にその六角堂に作品を展示したことがあったそうです。そのときの写真をスライドで見せていただきましたが、六角堂自体が海のすぐ近くにあるため、間島さんの作品がその海の一部のように建物の中にぽっかりとあり、とても不思議な感じがしました。ライトを当てているわけではなく、自然光を使用しているようなので、それがまた作品に影響を及ぼしているのかもしれません。

間島さんの作品は、清水寺、二条城、お茶室、六角堂、演劇用舞台などといったいわゆる美術館や画廊、ギャラリーといった展示空間ではない場所でおこなわれていました。そうした場所でおこなうにあたって、ライトではなく自然光で見せるなどの工夫がされています。作品も平面だけではなく、大きな円柱状のものや、立方体のもの、天井といった形態に描かれています。日本画という枠にとらわれない作風は、ジャンルの違う制作作品と一緒に展示したり、ダンサーたちとのコラボレーションと多岐にわたっています。

冒頭でも記しましたが、日本画と言えば、少しかしこまって制作するようなイメージがあります。しかし、間島さんの制作や作品、展示の方法はそのイメージをがらっと変え、創造と表現は無限であることを感じました。学生たちにとっても、励みになったように思えます。

間島さんは、美学校にて「超・日本画ゼミ」という授業をおこなっています。
また、展覧会も開催中です。ぜひ一度、その目で躍動する水の作品をご覧になってください。

「超・日本画ゼミ」についてはこちら
美学校HP

開催中の個展についてはこちら
間島秀徳 Exhibition:Cosmic garden vol.2
11月7日(木)~20日(水)12:00~19:00(日曜休廊)
Art gallery閑々居(かんかんきょ)



それでは。

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